介護の現場は、常に高い専門性と人間性が求められる職場です。
しかし、そこには見過ごせない重大な問題、介護ハラスメントが潜んでいます。
介護職員が利用者やその家族、さらには同僚や上司から受ける身体的・精神的な嫌がらせや不当な扱いが、深刻な社会問題として浮上しています。
被害に遭うだけでなく、無意識に発した言葉で部下からハラスメントとしてクレームを受けたり、訴えられることもあります。
この記事は以下のような方々に向けた内容です:
- 職場のハラスメントに悩んでいる方
- 後輩や部下からハラスメントだと抗議されたくない方
- 介護の現場でのハラスメント事情を詳しく知りたい方
まず最初に、ハラスメントのことで悩まないために必要なことをお伝えします。
それは、ハラスメントに関する知識を身につけることです!
自分を守り、相手が不快な気持ちになる言動を避けるために、ハラスメントの定義を理解し、法的権利を把握しましょう。
私も7年間介護の現場で働いてきましたが、どの職場でもハラスメントは存在しました。
私自身も被害を受けた経験があります。
ハラスメントという言葉が社会的に定着し、今ではどの企業もハラスメント対策を徹底していますが、実際の現場では……
嫌な先輩
最近は小さな事でパワハラとかセクハラとかうるさいのよねぇ
俺の若い頃は毎日怒られたり殴られるなんて当たり前だった!ハラスメントなんて甘えだ!
こんな声、聞いたことはありませんか?
私の職場でも、実際に先輩職員たちが口にしています。こんな声を聞くと、ハラスメントで辛い思いをしていても、なかなか相談できないですよね。
今回は、介護の現場で起こるハラスメントの事例や解決策についてまとめました。
ハラスメントの種類と実態
ハラスメントにはさまざまな種類があり、それぞれが他人に精神的や身体的な苦痛、不快感を与える行為を指します。
今回は、よく知られているものからあまり聞いたことのないものまで、一気にご紹介します!
- パワーハラスメント(パワハラ)
職場で上司や権力を持つ人が、その立場を利用して部下や他の従業員に嫌がらせや圧力をかけることを指します。
例:不当な業務指示、暴言、無視、過度な叱責、不要な仕事の押し付けなど。
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
相手の同意なく、性的な発言や行為を強要する嫌がらせです。職場や学校、公共の場などで起こります。
例:性的な冗談やコメント、不適切な身体的接触、性的な画像やビデオの送付など。
- モラルハラスメント(モラハラ)
言葉や態度で相手の自尊心を傷つけたり、精神的に追い詰める行為です。
例:相手を軽蔑する言動、無視、精神的な圧力をかけるなど。
- アカデミックハラスメント(アカハラ)
教育機関で、教職員が学生や研究者に対して不適切な指導や圧力をかけることを指します。
例:研究成果の搾取、論文の不正利用、不当な評価や過剰な指導など。
- マタニティハラスメント(マタハラ)
妊娠や出産を理由に、職場で不利益な扱いを受けたり嫌がらせをされることです。
例:妊娠を理由に解雇や降格、職場でのサポート不足など。
- エイジハラスメント(エイハラ)
年齢を理由に不当な扱いや嫌がらせを受けることです。若者や高齢者のどちらにも起こり得ます。
例:高齢の労働者に対する退職の強要、年齢を理由とした偏見など。
- カスタマーハラスメント(カスハラ)
顧客、利用者が従業員に対して、過剰な要求や暴言を浴びせる行為です。
例:無理な要求やサービスの強要、不当なクレーム、暴力的な態度など。
- アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールを無理やり飲ませたり、飲酒を強要することです。
例:会社の飲み会で飲みたくない人に飲酒を強制するなど。
- ジェンダーハラスメント
性別に基づく差別的な言動や扱いをする行為です。
例:「女性だからこの仕事は無理だ」と決めつける発言、性別に基づくステレオタイプによる嫌がらせなど。
- LGBTハラスメント
性的指向や性自認に基づく差別や嫌がらせです。
例:LGBTQ+の人々に対する侮辱的な発言、性自認や性的指向を尊重しない行為など。
これらのハラスメントは、個人の尊厳を侵害し、心身に大きなダメージを与える可能性があるため、社会的な理解と適切な対処が求められます。
今はハラスメントの種類もたくさんあります!軽率な言動がハラスメントに該当する場合もあるので注意しましょう!
今までのご自分の言動を見直してみて下さいね!
介護現場ならではのハラスメントの現状
先ほどハラスメントの種類について説明しました。
この様々なハラスメントが介護の現場で具体的にどのような形で行われているのかを解説していきます。
利用者、家族から職員ハラスメント
介護職員に対して、利用者やその家族が感情的になり、暴言や暴力を振るうケースがあります。
特に認知症の利用者が感情をコントロールできない場合に発生しやすいです。
認知症の症状が無い利用者でも
介護職員に暴言を吐いたり、圧力をかける事も多いです。
特に訪問系の現場でこのパターンが多いです。
訪問介護、訪問看護など職員が
少人数、又は1人で訪問する事が多く利用者の自宅で他に誰もいない環境と言う事もあり起こりやすいです。
特に新人職員に対して新人イジメを行ったり、若い女性職員の身体を必要以上に触ったり不純な要求をする利用者さんもいます。
他にも家族が過剰な要求を
介護職員に押し付けることもあります。
上司、職員からのハラスメント
介護事業所の上司や先輩職員が、後輩や部下に対して不当な言動や指導を行うケース。職場内での権力構造が強調され、無理な仕事を強要されたり、成果を過小評価されることがあります。これらはパワーハラスメントに該当します。
言葉や態度で職員を追い詰めるような行為、陰湿な言動や無視などのモラルハラスメント
職場内での性的な言動や不適切な接触はセクシャルハラスメントに該当します。
飲み会が多い職場であれば、無理矢理飲みの席に誘う、無理矢理飲酒させるなどアルコールハラスメントにも気をつけましょう。
職場にこんな事言う人いませんか?
こんな事聞いたらセクハラになるかな?(笑)
最近いつエッチしたの?
先に言っとくけどパワハラとかでいちいち騒ぐなよ?
俺はお前の為に言ってるんだからな?
これらも全部ダメです!!!
こう言う人たちは何なんですかね?
先に言っておいたらセーフだとでも思っているのでしょうか。
アウトです!!
介護ハラスメント(介護ハラ)まとめ
介護の現場で起こるハラスメントで、介護職員や介護を受ける人、その家族間での不適切な言動や行為を指します。
例:介護職員への暴言や暴力、過度な要求や無理なスケジュールの強要など。
これらのハラスメントは、個人の尊厳を侵害し、心身に大きなダメージを与える可能性があります
。特に介護ハラスメントは深刻な問題となっており、社会的な理解と適切な対処が求められます。
ハラスメントの怖い所は自分が被害に遭う事だけでなく
無意識に自分が相手にしている事もあるという所です!
ハラスメントがもたらす影響
心身への健康
ハラスメントによる強い精神的ストレスで、不安や緊張を引き起こします。それが長期間続くと
メンタルヘルス問題を誘発する可能性があります。それによって自尊心や自己効力感が損なわれ、仕事への意欲やモチベーションが低下します。
身体的にもストレスや不安により
- 睡眠の質が低下し慢性的な疲労を感じる
- 食欲不振や過食など食生活への影響
- 頭痛、胃痛、めまいなどの身体的な不調
などの数々の影響が出てきます。
職場環境への影響
- 生産性の低下: 被害者だけでなく、職場全体の生産性が低下する傾向があります。
- チームワークの崩壊: 信頼関係が損なわれ、円滑なコミュニケーションが困難になります。
- 離職率の増加: ハラスメントが放置されると、優秀な人材が職場を去る可能性が高まります。
組織への影響
- 評判の悪化: ハラスメント問題が公になると、組織の信用や評判が損なわれます。
- 法的リスク: 被害者からの訴訟や行政からの指導・勧告を受ける可能性があります。
- 経済的損失: 生産性の低下や人材流出、訴訟費用などにより、組織は経済的な打撃を受けます。
このような問題が多発すると業界全体の信用も損ねてしまい社会的にも影響します。
特に介護業界は人材不足に悩まされているのでハラスメントの影響で働きにくい環境として認識されると、新規人材の確保が難しくなり、さらに人材不足の深刻化は進みます。
個人のキャリアへの影響
- キャリアの停滞: ハラスメントにより仕事への意欲が失われ、キャリア形成が妨げられます。
- スキルアップの機会損失: 学習意欲の低下により、研修や資格取得の機会を逃す可能性があります。
本来優秀な人材がハラスメントの影響で実力を位発揮できない、退職してしまう、なんて事もあります。
ハラスメントの原因と背景
介護現場におけるハラスメントの原因と背景について解説いたします。
1. 人手不足と過重労働
介護業界は慢性的な人手不足に陥っており、その結果、スタッフ一人ひとりの労働負荷が増大しています。過重労働による疲労やストレスが蓄積することで、職場内でのコミュニケーションが円滑に行われず、ハラスメントが発生しやすくなります。
2. 職場の人間関係とコミュニケーション不足
介護現場では、多職種のスタッフが協力して業務を行う必要がありますが、コミュニケーション不足や人間関係の摩擦が原因で誤解や対立が生じることがあります。これがハラスメントの原因となる場合があります。
3. 教育・研修の不足
ハラスメントに関する知識や対処法についての教育・研修が不十分だと、スタッフが問題の深刻さを理解せず、不適切な言動をとってしまう可能性があります。
4. 上下関係や組織文化
古い上下関係や硬直した組織文化が残っている職場では、パワーハラスメントが起こりやすい環境となります。上司からの過度な指導やプレッシャーがスタッフのストレスを増大させます。
5. 利用者からのハラスメント
介護スタッフは、認知症や精神的な疾患を持つ利用者からの暴言や暴力にさらされることがあります。適切な対応策やサポート体制が不足していると、スタッフのメンタルヘルスに悪影響を及ぼします。
6. 業界全体の社会的評価
介護業界は社会的評価が必ずしも高くなく、給与や待遇が他業種と比較して低い傾向があります。これがスタッフのモチベーション低下や不満の原因となり、ハラスメントにつながることがあります。
背景
- 高齢化社会の進行: 高齢者人口の増加に伴い、介護ニーズが高まっていますが、それに対する人材供給が追いついていません。
- 社会的認識の不足: ハラスメント問題が社会全体で十分に認識されておらず、問題が表面化しにくい環境があります。
ハラスメントの対策
記事の冒頭で話したハラスメントで悩まないためにはハラスメントに関する知識を深める事と書きました。それ以外にもハラスメントのトラブルを回避する対策はいくつかあります。
コミュニケーションスキルの向上
- 明確な意思表示: 不快な言動に対しては、その場で明確に「やめてください」と伝えることが重要です。
- 積極的なコミュニケーション: 同僚や上司、利用者との良好な関係を築くことで、誤解や対立を未然に防ぎます。
境界線の設定
- プロフェッショナルな距離感: 利用者や同僚との適切な距離感を保ち、個人的な感情が介入しないようにします。
- プライバシーの保護: 個人情報や私生活に関する話題を必要以上に共有しないよう注意します。
研修やトレーニングへの参加
- ハラスメント防止研修: 職場で提供される研修に積極的に参加し、対処法や予防策を学びます。
- ストレス管理やメンタルヘルス研修: 自身の心の健康を維持するためのスキルを習得します。
安全対策の実施
- リスクの高い利用者への対応策: 暴力や暴言の可能性がある利用者には、複数人で対応するなどの安全策を講じます。
- 緊急時の対応方法の確認: 緊急ボタンの場所や避難経路など、職場の安全対策を把握します。
相談・報告体制の活用
- 早期報告: ハラスメントを受けた場合は、信頼できる上司や相談窓口に早めに報告します。
- 匿名相談の利用: 職場に匿名で相談できる制度があれば積極的に利用します。
記録の保持
- 詳細なメモの作成: ハラスメントの日時、場所、内容、関係者などを詳細に記録します。
- 証拠の保存: メールやメッセージなどの証拠があれば、安全な場所に保管します。
同僚との協力
- 情報共有: 同じような被害を受けている同僚がいれば、情報を共有し協力します。
- サポートネットワークの構築: 職場内で信頼できる仲間を作り、お互いにサポートし合います。
メンタルヘルスのケア
- 自己管理: 十分な休息や趣味の時間を確保し、ストレスを溜め込まないようにします。
- 専門家への相談: 必要に応じてカウンセラーや医療専門家に相談します。
プロフェッショナルな態度の維持
- 倫理観の遵守: 職業倫理を守り、常にプロとしての態度を保ちます。
- 冷静な対応: 感情的にならず、冷静に状況を判断します。
職場環境の改善提案
- 意見の発信: 職場のハラスメント対策が不十分であれば、改善策を提案します。
- 組織へのフィードバック: 定期的なアンケートや面談を通じて、職場環境に関する意見を伝えます。
外部機関の活用
- 労働基準監督署や労働組合: 職場内で解決が難しい場合は、外部機関に相談します。
- 専門家の助言: 弁護士や労働問題の専門家にアドバイスを求めます。
以上の対策を実施することで、ハラスメント被害を未然に防ぎ、万一被害に遭った場合でも適切に対処することが可能となります。自身の安全と健康を最優先に考え、安心して働ける環境を維持することが重要です。
私の経験した介護ハラスメント
以前、私はある介護施設で働いていましたが、そこでは施設長によるハラスメントが横行していました。残業や休日出勤は当たり前で、希望休も取れない状況でした。施設長からは大声で怒鳴られたり、物を投げられたりと、まさにパワハラのフルコースでした。
その施設長の名言があります。
「休日出勤はお願いしているわけじゃない!こっちはお前の休みを金で買うと言っているんだから、拒否権は無いと思え!」
ちなみに、この施設については以前の記事でも紹介しています。
当時の私は、介護業界でのハラスメントについてよく理解できず、ただ悩み続けるだけでした。早く辞めたい、もう会社の人と話したくないという思いから、退職代行サービスを利用して退職しました。
訪問入浴で見た様々なハラスメント
訪問入浴で働いていたとき、利用者やその家族からのハラスメントが多いと感じました。
例えば、女性職員にセクハラ行為をする利用者さんがいました。
入浴前のバイタルチェックの際に女性看護師の手を握ったり、入浴中に女性職員に陰部を素手で洗うように要求したりと、今思い出しても不快な行為でした。
他にも、訪問する職員の好き嫌いが激しい利用者さんがおり、嫌いな職員が訪問すると罵倒したり、サービスを拒否したりすることもありました。
このような現場を管理職に報告しても、「舐められてるだけ」「嫌なら本人にはっきり言えば?」と取り合ってもらえませんでした。
さらに、この訪問入浴の会社では職員間でもハラスメントが横行しており、管理職や上司から平社員、パート、派遣へのパワハラ・セクハラ・モラハラもありました。
私は何とかしようと思い、上司と一緒に行動する際に必ずパワハラやモラハラが発生するので、スマホで録音していました。それを会社の相談窓口に提出したところ、後日、上司は降格と左遷の処分を受けました。
まとめ
今回の記事の内容をまとめると
介護業界でのハラスメントは深刻な問題であり、施設内のパワハラだけでなく、利用者やその家族からのセクハラやモラハラも発生しています。
私自身の経験を通じて、これらの問題の実態と対処法の一例をお伝えしました。
ハラスメントに悩んでいる方は、一人で抱え込まずに信頼できる相談窓口や専門機関に相談することが重要です。また、証拠を残すことで問題解決の一助となる場合もあります。
詳しくは以下の記事も参考にしてください。
外部リンク:
介護の現場で働く皆さんが安心して働ける環境づくりのために、一緒に問題に取り組んでいきましょう。
優秀な人は時代は変化を受け入れ順応できる人です。
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