介護士実務者研修は、介護職のスキルアップを目指すための中間的な研修で、介護福祉士になるためのステップでもあります。この研修を修了することで、介護の現場でより高度な役割を担うことができ、介護福祉士の国家試験受験資格も得られるため、非常に重要な研修です。
今回は実務者研修の研修内容、費用、メリット、取得した後に就ける職種であるサービス提供責任者について詳しく解説していきます。
介護福祉士試験対策についてはいくつか記事を掲載していますのでそちらもご覧下さい。
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実務者研修の内容
- 介護過程:
- 利用者一人ひとりの状態に合わせたケアプランの作成と実施方法について学びます。個別の介護計画の立案から評価までをカバーします。
- 医療的ケア:
- たんの吸引や経管栄養など、介護現場での基本的な医療行為を学びます。看護師の指示のもとで行うための基礎知識と技術が含まれます。
- 介護技術の向上:
- 身体介護に関する実践的な技術を深めます。食事介助、排泄介助、入浴介助など、日常的な介護スキルをさらに専門的に習得します。
- 認知症ケア:
- 認知症高齢者への対応方法やコミュニケーションスキル、行動心理などを学びます。
- サービス提供責任者の役割:
- サービス提供責任者としての業務やリーダーシップのスキルを学び、チーム全体の運営を担うための知識を深めます。
受講するメリット
- 介護福祉士の受験資格: 実務者研修を修了することで、介護福祉士国家試験の受験資格が得られます。介護福祉士は介護職のプロフェッショナルであり、資格取得によってキャリアの幅が広がります。
- 医療的ケアが可能: 研修修了後は、たんの吸引や経管栄養など、介護職としての範囲内で医療的ケアを行うことができ、介護現場での役割が増えます。
- 給与やキャリアアップ: 実務者研修を修了すると、給与アップのチャンスが増え、施設内での昇進やキャリアアップにもつながります。また、サービス提供責任者などのリーダーシップポジションを目指すことも可能です。
- 専門知識の習得: 介護に関するより深い知識を得ることで、より質の高いケアを提供できるようになります。利用者の状態に応じた最適なケアプランの作成や、緊急時の適切な対応ができるようになります。
この研修を受けることで、介護の現場で活躍するためのスキルと知識が一段と向上し、より責任ある役割を担うことができるようになります。
サービス提供責任者(サ責)とは?
サービス提供責任者(サ責)は、主に訪問介護事業所で働く介護職員の中で、ケアマネージャーや現場スタッフと連携し、サービスの調整や管理を担当する役職です。訪問介護における重要な役割を担い、介護サービスが利用者に対して適切に提供されるよう、サービス全体を管理・調整します。
サービス提供責任者の主な業務
- 訪問介護計画書の作成:
- ケアマネージャーが作成したケアプランに基づき、具体的な訪問介護計画書(利用者への具体的なサービス内容やスケジュール)を作成します。
- 介護スタッフの指導・管理:
- 訪問介護員(ヘルパー)の業務を指導・管理します。スタッフのスケジュール調整や業務の指導・サポートが含まれます。また、サービスの質を保つために定期的に現場の確認を行い、必要に応じて改善指導を行います。
- 利用者や家族との調整:
- 利用者やその家族との面談や相談を行い、サービスの内容や進行についてフィードバックを受け、必要に応じてサービス内容を調整します。利用者の状態や希望をしっかりと把握し、サービスの質を維持します。
- ケアマネージャーとの連携:
- ケアマネージャーと連携し、利用者の状態に応じた最適なサービスが提供されるよう、プランの見直しや改善提案を行います。利用者の状態やサービス提供に関する情報を、定期的に報告します。
- サービスの調整:
- 訪問介護員のスケジュールや、サービスの内容に合わせた調整を行います。利用者ごとのニーズに応じて適切な訪問介護員を配置し、円滑なサービス提供をサポートします。
- 書類管理・報告書作成:
- 介護計画書や利用者の記録、サービス提供に関する報告書など、書類管理も担当します。訪問介護に関わる法定書類や、サービスの提供内容を記録し、必要に応じて関係機関に提出します。
サービス提供責任者になるための条件
- 資格要件:
- 実務者研修の修了または介護福祉士の資格が必要です。実務者研修を修了していることで、サービス提供責任者として働くことが可能になります。
- 実務経験:
- 一般的に、訪問介護事業所ではサービス提供責任者としての業務を行うには、一定の実務経験が求められることが多いです。経験豊富で、介護の現場を理解していることが重要です。
サービス提供責任者のメリット
- キャリアアップのステップ:
- サービス提供責任者としての経験は、管理職やケアマネージャー、さらには介護施設の運営管理職など、さらなるキャリアアップにつながります。
- 責任ある役割:
- 現場と利用者、ケアマネージャーとの架け橋として、介護サービスの質を高める責任ある役割を担います。多くの人と関わり、リーダーシップを発揮する機会が増えます。
- 給料は上がっています:
- 一般的に、サービス提供責任者は介護職員の中でも待遇が良く、給与も上がる傾向にあります。管理業務や調整役としての役割が重視されるためです。
サービス提供責任者としての重要性
サービス提供責任者は、利用者の生活の質を向上させるために、非常に重要な役割を果たしています。介護スタッフ、利用者、家族、ケアマネージャーとの連携をスムーズに行い、介護の現場で起こり得る問題に迅速に対応するため、責任感と調整力が求められます。
サービス提供責任者は、訪問介護の要ともいえるポジションであり、介護職の中でも非常にやりがいのある役割です。ケアマネージャーなど相談業務に就きたい方はサ責になると実際にケアマネさんと仕事をする機会が増えるし相談業務の経験も積むことができます!
実務者研修のカリキュラム内容
実務者研修のカリキュラムは、介護職としてのスキルや知識をさらに深め、サービス提供責任者や介護福祉士を目指す人向けに構成されています。主に次の内容で構成されています。
1. 介護過程
- 利用者の生活を支えるために、個別の介護計画を立案・実施・評価するスキルを学びます。実際の介護現場で、利用者に合わせた対応方法を理解します。
2. 医療的ケア
- たんの吸引や経管栄養など、介護現場で行う医療的なケアに関する基礎的な知識と技術を学びます。これは、実務者研修の修了後に実際の現場で役立ちます。
3. 認知症ケア
- 認知症の症状や対応法、ケア技術を学びます。利用者の心理や行動に合わせたコミュニケーション方法やケアの工夫がテーマです。
4. 生活支援技術
- 食事介助、排泄介助、入浴介助、移乗介助など、日常生活支援に関するスキルを向上させます。利用者が快適に生活できるような具体的な技術を学びます。
5. サービス提供責任者の役割
- サービス提供責任者としての仕事に関する知識を習得します。チームリーダーとしてのスキル、介護計画の作成、職員の指導や管理などが含まれます。
6. コミュニケーション技術
- 利用者や家族、他のスタッフとの円滑なコミュニケーション方法を学び、現場でのトラブルを避けるためのスキルを向上させます。
7. 障害の理解
- 身体障害や精神障害についての理解を深め、障害のある方への適切な支援方法を学びます。
8. 社会福祉と法律
- 介護に関連する法的知識や社会福祉制度について学びます。介護職が直面する法律問題への対応や福祉サービスの提供に関する法的な枠組みを理解します。
総時間数: 450時間 医療的ケア2日 介護過程5日 計7日➕ 自宅学習
免除可能な科目
- すでに「介護職員初任者研修」や「ホームヘルパー2級」などの資格を持っている場合、一定時間の研修が免除されることがあります。例えば、介護職員初任者研修を修了している人は、一部の科目が免除され、時間が短縮されます。
実務者研修の受講費用
実務者研修の受講費用は、教育機関や受講者の状況によって異なりますが、一般的には以下のような価格帯になります。
1. 通常の受講費用
- 10万円~20万円程度が一般的です。これは、初任者研修を受けていない場合の標準的な価格です。
2. 初任者研修修了者の場合
- 7万円~15万円程度。初任者研修やホームヘルパー2級の資格を持っていると、一部の科目が免除されるため、費用が減額されます。
3. 奨学金や補助金
- 一部の地域や職場では、実務者研修の費用を補助する奨学金や補助金制度が利用できる場合があります。特に介護施設に勤めている場合、施設側が受講費用の一部または全額を負担するケースもあります。
受講する際のポイント
- スクール選び: オンライン対応や通学制、夜間・土日のクラスなど、ライフスタイルに合ったスクールを選ぶことが大切です。
- 費用補助制度: 自治体や勤務先で受講費用の補助がないか確認することをお勧めします。
この研修は介護福祉士国家試験を目指すだけでなく、現場でのスキルを高め、キャリアアップの一環としても非常に有用です。
介護士実務者研修が受講できる有名な講座
介護士実務者研修が受講できる有名な講座を紹介します以下は、日本全国で利用されている主要な講座です。
1. ニチイ学館
- 全国的に展開しており、介護系資格取得支援の実績が豊富です。
- 働きながら資格を取るためのサポートが充実しており、オンライン学習も可能です。
- 実務者研修だけでなく、介護福祉士試験対策講座も提供しています。
2. 三幸福祉カレッジ
- 介護業界での実績が長く、各種介護資格に対応した研修が豊富です。
- 実習が充実しており、資格取得後の実践的なスキルを養うのに役立ちます。
- 通学や通信での学習スタイルが選べます。
3. 日本福祉アカデミー
- オンラインと通学の両方で学べるため、ライフスタイルに合わせた学習が可能です。
- 実務者研修を受講しながら、介護福祉士の受験資格を得るための支援も行っています。
4. 未来ケアカレッジ
- 全国に多くの教室があり、アクセスが良いです。
- 介護職未経験の人でも安心して学べるように、基礎からしっかり教えてくれるカリキュラムがあります。
- 通信制と通学制のどちらも選択でき、現役介護職員向けの柔軟なスケジュールも提供。
5. 中央法規教育出版
- 介護に関する出版物で有名な会社が提供する講座で、教材の質が高いです。
- 実務者研修だけでなく、介護職員初任者研修や介護福祉士国家試験対策も扱っています。
これらの講座は、提供地域や価格、サポート体制が異なるため、自分の状況やニーズに合ったものを選ぶことが大切です。また、勤務先が提供する研修制度も確認してみるとよいでしょう。
実務者研修は通過点!目指すは介護福祉士!
実務者研修修了はゴールではなく、あくまでも介護福祉士試験の受験資格を満たすための通過点と考えましょう。しかし、だからと言って実務者研修の内容を疎かにしていいというわけではありません。
実務者研修の内容は、介護福祉士試験に直接通じています。特に、以下の点で介護福祉士試験に役立ちます:
- 介護技術の向上:実務者研修では、介護に必要な専門的な技術や知識を深めるカリキュラムが含まれています。これにより、介護福祉士試験の実技や技術に関連する問題に対応するスキルが身に付きます。
- 医療知識の習得:実務者研修では、医療的ケアに関する基本的な知識や実践的な技術を学びます。これは介護福祉士試験に出題される医療関連の問題にも直結します。
- 試験資格の取得:実務者研修を修了していないと、介護福祉士国家試験を受験する資格が得られません。つまり、実務者研修は介護福祉士試験を受けるための必須条件です。
- 現場対応力の向上:研修では、実際の介護現場で役立つ応用的な知識も学べるため、試験で求められるケーススタディ問題などにも対応しやすくなります。
したがって、実務者研修で得た知識や技術は、介護福祉士試験の準備に非常に有益です。
最後に
私も実務者研修を受講しましたが研修内容は盛りだくさんで疲れました。
医療的ケアでは講師の看護師さんに見られながら経管栄養や喀痰吸引の実習、テストを正確に行わなければいけません。少しでもミスがあると最初からやり直しで全然進みません。
介護過程では架空の利用者の事例を読んでその人にあったケアプランを考えます。
事例の中から細かく情報を読み取りノートに写す作業もあり、書いては消しを繰り返して
机の上が消しゴムのカスで山盛りになりました。
そんなスクーリングの研修を終えても自宅学習が残っています。
自宅学習では通信試験もありそれが結構難しいのです。基準点をクリアすると合格なのですが
全20科目あります!
まあ、なかなかめんどくさい研修でしたね‥
全て合格して修了証明書が届いた時はほっとしました。すぐにコピーを取って会社に提出したのを覚えています。
費用もかかって内容もしんどい研修ではありますが、今後絶対に役に立ちます!
ですからまだ受講していない方、受講を考えている方は早めに受講することをおすすめします。
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